自閉症スペクトラム障害（ASD）の子供に対する運動療育の効果と早期支援の大切さについて

こんにちは。

本日は自閉症スペクトラム障害（Autism Spectrum Disorder, ASD）の子供に対する運動療育の効果についてお話いたします。

 

自閉症スペクトラム障害（Autism Spectrum Disorder, ASD）は、社会的相互作用、コミュニケーション、興味・関心において特徴的な問題がある発達障害の一つです。

この障がいには幅広い症状が含まれ、それぞれ症状の程度や種類が異なり、主な症状として

・社会的相互作用の困難さ

・コミュニケーション能力の低さ

・反復行動・興味の強いこだわり

などがあげられます。

また、知的障がいや発達遅滞、注意欠陥・多動性障害（ADHD）や不安障害、強迫性障がいなどの併存が見られることもあります。

 

 

そんな自閉症スペクトラム障害（Autism Spectrum Disorder, ASD）の特性のひとつとして実行機能の低さが挙げられます。

実行機能というのは、人間が目標を達成するために必要な計画を立て、実際に行動を起こす能力のことです。

 

例えば、学校のテストに合格するために勉強することを目標にしている場合、学習計画を立て、実際に勉強を開始し、集中力を維持し、必要な時間を使って学習を行うことです。

 

また、日常生活においても実行機能は重要で、例えば7時45分に家を出発して学校へ行く場合、6時45分に起きて、7時15分までに朝ごはんを食べて、7時30分までに着替えて7時40分までにランドセルの中身を確認して、最後トイレに行って出発といった具合に段取りを決めたりすることも実行機能のひとつです。

朝のテレビを見たいけど時間になったから歯磨きしに行くといった具合に気持ちを切り替えたり、ランドセルの中身はどのように確認すれば忘れ物をしないか過去の経験を思い出して行動するのも実行機能のひとつです。

 

このように、実行機能は、計画を立て、集中し、思考をまとめし、自己調整する能力などが含まれ、これから長い社会生活を送る上で大切な能力となります。

 

自閉症スペクトラム障害の特性として実行機能の低さが挙げられますが、そんな実行機能が運動によって向上することはご存知でしょうか？

 

 

自閉症スペクトラム障害（Autism Spectrum Disorder, ASD）に関して、中国の香港中文大学で行われた運動と実行機能の関係に関する研究論文*を紹介します。

この研究は、自閉症スペクトラム障害（ASD）を持つ子供や思春期の人々における運動介入が、実行機能に与える影響に焦点を当てたシステマティックレビューとメタ分析となっています。

（システマティックレビュー、メタ分析というのは、簡単に言えば研究のまとめ研究のことで、信憑性の高い研究のことです。）

 

この研究は、2021年1月までに発表された自閉症スペクトラム障害（ASD）の人に対する運動と実行機能の関係について調べた259件の研究の内、信憑性の高い21の研究からデータを収集し、結果を分析しました。

ちなみに研究には、ASDを持つ子供や思春期の人々を対象とし、

・有酸素運動

・レジスタンストレーニング（筋トレ）

・ヨガ

・ダンス

などの様々な種類の運動が含まれており、実行機能に関するテストを使用して、運動前と運動後の結果を比較しています。

 

 

研究の結果、自閉症スペクトラム障害（ASD）の人に対し、運動は実行機能に有意な改善をもたらすことが示されました。

特に、計画、組織、注意、認知柔軟性、作業記憶の分野において、運動介入が有効であることが示されました。

さらに、有酸素運動が最も効果的であることが示唆され、抵抗運動、ヨガ、ダンスも実行機能に改善をもたらすことがわかりました。

 

 

もちろん100％確実に効果があるとは言えず、この研究にはいくつかの限界があります。

自閉症スペクトラム障がいに対する運動と実行機能に関して調べた研究の数自体が少ないこと、個人差があるため運動介入の効果も個人差がある可能性が挙げられるなどの課題はありますが、運動が自閉症スペクトラム障がいの人々の実行機能に有効であると言えそうです。

 

 

白ゆりグループでは早期支援を行う児童デイ・放課後等デイ、成人後日中活動の場としての生活介護や就労継続支援B型事業所、安全に毎日を過ごすことができるグループホームや苦手な家事を手伝う居宅サービス、休日を充実した一日にするための移動支援など、お子さんの人生を様々な方向から支援を行うトータルサポートに取り組んでおります。

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